トントンハウス物語 vol.2

晴れて、お店オープン!

平成17年10月8日。

息子の7歳の誕生日に、晴れてスーパーの中のインストアベーカリーとしてお店をオープンすることができました。

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オープン当初のお店の様子


店長と妻のきよみさんの夫婦2人からのスタート。

親元を離れていたので、小学1年生の息子はお店から学校へ行き来していました。


学校から帰ってくると、サンドイッチ室で宿題。

狭い厨房は、もはや家と化していました。


夫婦2人でスーパーのインストアベーカリーを切り盛りすることは、思っていた以上に大変でした。

休みは元旦だけ、オープンしてから半年は、夜中の12時頃まで仕事。

カマで暖を取って、一晩過ごしたことも。


やることが多すぎて終わらないのです。


息子は家に帰りたくないと駄々をこね、厨房にあるパイプイスでよく寝ていました。

本気で厨房の中に簡易ベッドを作ろうかと検討したほどです。

スペースがなくて諦めましたが…


睡眠不足で学校でよく寝ていたらしく、先生にも呼び出されたり。

「仕事も大切ですが、もう少し息子さんを見てあげられませんか?」って。

ですよね…(^_^;)


そんな中、おいしいパンをお客さまに届けたくて、毎日心を込めて夫婦でパンを作っていました。

一番のおすすめ商品は、もちろん、tonton食パン。

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他にも、都会で有名なパン屋で習った菓子パン、惣菜パン、フランスパン、ラスクなど、100種類以上のパンを作りました。

でも・・・

全くお客様に見向きもされず、毎日たくさんのパンが売れ残る日々。


実は、当店が入る前は「お値打ち価格」で有名なパン屋。

食パンやフランスパンは100円、菓子パンや惣菜パンは65円で販売されていたのです。


それがお店が変わって、今までの2倍以上の価格になったんです。

そうそうお客様はお店に足を踏み入れていただけません。


せっかく作った焼きたてパン。

どうにかお客様に召し上がっていただこうと、試食を配りまくったり、チラシを撒いたり。

それでもパンは売れ残り、泣く泣く廃棄していました。


当時はデフレの真っ最中。

スーパーは安売り合戦、目の前の袋売りの菓子パンは98円で販売されていました。


ならばトントンも!と菓子パンを98円で販売することに。

それなりに売れましたが、作っても作っても利益は出ません。

むしろ赤字。


お値打ちのパンを求められるお客様が集まるようになり、お店の雰囲気も荒れる一方。

生産性を求めてしまうので、パンのクオリティもどんどん下がっていきました。


半年間頑張りましたが、ただただ疲れました。

そして、半年を持って、お値打ち価格のパンの販売に終止符を打つ事になったんです。


お客様からのヒント

そんなある日、いつもお越しいただくお客様がパンを手に持ちつつ迷われていたので、当時接客をしていたきよみさんがお客様に「どうされました?」と伺うと、

「このパン、おいしいんやけど、子供が食べるにはちょっと大きいなぁ。この半分の大きさにならん?」

じゃあ、明日半分の大きさで作るんで、お昼ごろにお越しいただけますか?

「来る来る!」


きよみさんにコッペパンの半分のパンを作るようにお願いされた店長は、戸惑いました。

都会でのパン屋で習得したおしゃれなパンを作れば、必ずお客様が振り向いてくれると思っていたからです。


コッペパンを半分にして、丸めただけのパン。

こんなパンで、本当にお客様は喜んでいただけるのか…?


翌日、半信半疑で半分の大きさのパンを作りました。

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作ったパンをお客様にお渡しすると、とても喜ばれました。

「私のために、パンを作ってくれたっ!」

その時のお客様の笑顔が忘れられない。

そう、きよみさんから聞いて、店長は思ったんです。


お客様に喜んでいただこうと思って作っていたパンは、実はお店側が食べて欲しいパンを作っていたんだということ。

自分が食べて欲しいパンを作るんじゃなくって、お客様が食べたいパンを作れば喜んでいただけるということ。


ちょっとした違いですが、何だかガツンと頭を殴られたような気持ちでした。

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