トントンハウス物語 vol.3

卵と乳製品を使っていないパンを作っていただけませんか?

お客様にどんなパンを食べたいか伺って、形にしていこう。

お店に並んでいるほとんどのパンは、お客さまやスタッフが食べたいと思ったパンに変わっていきました。


時には「このパンを同じパン作れる?」と、他のパン屋さんの商品を持って来られることも。

店長が都会で習得したパンはどんどん姿を消していきました。


そんなある日、こんな『お客様の声』を聞いたのでした。

「卵と乳製品を使っていないパンを作っていただけませんか?」

当時小学校5年生だった、ちなみちゃんのお母さんからのご依頼でした。


ご近所で顔なじみのちなみちゃんは卵・乳アレルギー。

今まで卵と乳製品抜きのパンを作っていただいてたパン屋さんが辞められるということで、やむなくウチに相談に来られたのでした。


その時、このお店で卵・乳製品を使っていないパンはフランスパンだけ。

柔らかくて美味しいパンを作るには、卵や乳製品を入れるのがパン屋の常識です。

実際に卵と乳製品を使わずにパンが作れるのかどうかすらわからない状態でした。


でも、せっかくご要望をいただいたんです。

何とかお客様の声にお応えしたい。


ご要望をいただいたのは、卵と乳製品を使わないコッペパン。

業務用ミキサーでパンを捏ねると、最低でも100個は出来てしまいます。

まずは手捏ねで卵と乳製品を使わないコッペパンを作ることにしました。


画像の説明

初めて作ったコッペパン。始まりはここからでした。


恐る恐る、ちなみちゃんに食べてもらうと・・・

満面の笑顔!

「フワフワで美味しい!!」

あの時のちなみちゃんの笑顔が忘れられません。


次はどんなパンが食べてみたい?

ご注文をいただいては手で捏ねて、ちなみちゃんのためにコッペパンを作っていました。

すると、その噂を聞きつけて、何人かのお客様に卵と乳製品を使っていないコッペパンのご注文をいただけるようになりました。

なぜか火曜日と木曜日にご注文が集中。

不思議に思って、お客様に伺うと、

「近くの寺井病院の検診日が火曜日と木曜日なのよ。」


画像の説明

たまたま近くの病院にアレルギー科がありました。

その待合室で、トントンに行ったら食べられるパンを作ってくれるらしいというウワサが流れているそうなのです。

日に日に卵・乳不使用のコッペパンのご注文が増えていきました。


そうか、アレルギーでパンが食べられない方がこんなにいらっしゃるのなら、店頭でも販売しよう。

コッペパンだけではなく、徐々に、テーブルロール(バターロールのような生地だけのパン)を卵・乳製品不使用のパン生地に切り替えていきました。


嬉しそうに食べてくれるちなみちゃんに、なんとなく「次はどんなパンが食べてみたい?」と聞いてみると、キラキラした目でこう言いました。

「クロワッサンが食べてみたい!」

そうか、わかった!おっちゃんに任せとき!!


勢い良く返事をしたのはいいのですが、生地はコッペパンの生地でいいとして、問題はバターの代わり。

サクサク感もさることながら、バターの風味がクロワッサンの命です。

これをどう解決するのか?


ああでもない、こうでもないと何度も試作を繰り返し、どうにかクロワッサンの形にはなりました。

サクサク感は表現出来ましたが、なんだか味が物足りない。

さつまいもやりんごで味付けするも、なんだか微妙(^_^;)

甘さが足りない。

試行錯誤の末、辿り着いたのが、砂糖を折り込む方法。

昔流行った「クイニーアマン」と同じ。


画像の説明

シュガークロワッサンの完成です。


試作を始めてから半年の月日が流れていました。

ちなみちゃんのお母さんに電話をして、お家まで持って行きました。

「サックサクで美味しい!生まれて初めてクロワッサン食べました!!」


それ以来、ちなみちゃんの家ではクロワッサンは常備品。

家に帰ってきてクロワッサンがないと、ちなみちゃんは荒れていたそうです(笑)

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