トントンハウス物語 vol.6

仕事のない、危ういスタート

建坪134坪。

4人のスタッフで作業するにはあまりにも広すぎます。

半分のスペースに厨房を作って、半分は倉庫。

いよいよ、新しいトントンのスタートです。


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ネット販売専用のアレルギー対応のパン工場。

卵と乳製品を一切持ち込まない工場なので、これでやっと重度のアレルギーの方にも自信を持ってオススメ出来る!

お店もネット販売用の商品を作らなくても良くなったので、地元のお客様にしっかりとおもてなしが出来る!!


とは言うものの、一日10件程度のご注文で工場を運営できるほど甘くありませんでした。

すぐにご注文分を作り終わってしまい、午後にはやることがない…

そりゃそうですよね。

一日10人しかお客様が来られないパン屋なんて、すぐに廃業です。


ほとんど使われることのないピカピカの機械の掃除と、建物の周りの草むしり。

そんな日が続きました。


仕事もないのに掃除ばかりするわけにも行かない…

ネット販売だけではなく、卸販売先を見つけよう!

そう思い立ち、石川県のスーパーさん、そして生協さんに営業することにしました。


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電話でアポイントを取って、営業回り。

初めての経験です。


「アレルギーを持って生まれる子が毎年増え続けています。特に多いのが卵と乳のアレルギーです。そんな子供たちが食べられるパンを作りました!こちらで販売いただけませんか?」

そうお伝えすると、みなさん同じことを言われるんです。

「トントンハウス?知らないなぁ〜卵と乳製品を使わないパン?おいしいの??で、いくら??」


製造メーカーが売り込みをすると、必ず価格からの話になってしまいます。

当然です。

販売店は、利益が見込めない商品を販売するわけには行きません。


どこのスーパーさんにも販売されていていません!

みんなアレルギーで困っているんです!!


その想いがスーパーさんの担当者に伝わることはありませんでした。


ららぽーと横浜での催事

そんな中、イトーヨーカドーさんから催事のお話をいただきました。

期間は一週間。田舎では考えられないくらい大きなショッピングモール、ららぽーと横浜の中のイトーヨーカドーさんの催事コーナーです。

小さな田舎のパン屋には願ってもないチャンス!


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・都会の方ではアレルギー対応パンの需要はあるのか?

・焼きたてでもないパンを並べて、果たして売れるんだろうか?

・右も左も分からない場所で、知名度も全くない場所で、受け入れてもらえるものだろうか?


不安は尽きません。


でも、せっかく機会をいただいたんです。

赤字になってもいいから、とにかく挑戦してみよう!

パンをどんどん焼いて、毎日横浜に送りました。


販売はきよみさん。一週間の出張です。

当時のららぽーと横浜の来客数は、なんと10万人。(ちなみにお店がある能美市の総人口は3万人^_^;)

通路は人・ひと・ヒト!

さぞかしパンが売れるのかと思いきや、ほとんどの方は素通りです。


そんな中でも、試食を配っているとポツリポツリとお客様が寄ってこられるようになりました。

「これ、卵も乳製品も使っていないの!ホント!!そんなパン、初めて!友達の子がアレルギーだから、呼んできます!」

日に日にお客様が増えていきました。


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ここでも多くの方に知っていただけたのはブログの力。


ブログで知って来ました!と茨城県から来られたお客様。

いつもインターネット販売をご利用いただいているお客様。

がんばってね!と声をかけてくださった警備員のおじさま。


全てブログを読んでくださっているお客様でした。

石川県に篭っていたんじゃわからなかった感覚です。

ブログって、スゴイ!


そんなこんなで、最終的には運送料が響いて赤字になりましたが、たくさんの方にお目にかかって、たくさんお話させていただきました。

「パンを売る」と言うより、「たくさんの方との出会い」のための催事。

とてもいい経験をさせていただきました。


初めての卸販売は、またしてもお客様からの後押しから

催事が終わって3ヶ月。

ほとんどご注文をいただけない状態が続きました。

このまま行くと、このパン工場を運営していくのは困難です。


営業に行っても成果なし。

インターネット広告を出してもほとんど反応なし。


困りました。


そんな中、一本の電話が…

「カジマートと申します。御社のパンを卸していただきたいのですが、いかがですか?」


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カジマートさんは、金沢市の北部、津幡町を中心に展開されているスーパーさん。

売り込み営業には行っていない地域でした。


「お客様から『トントンのパンを置いて欲しい』とのご要望があって、先日こっそりと買いに行きました。こんなに美味しいパン、ぜひ!カジマートで販売させてほしい!!」

カジマートの常務さんから直接お電話をいただきました。


そのお客様は週に2回、お家から30km離れたカジマートさんに通われてて、なんと60kmも離れたウチのパンも買いに来てくださってると言うじゃありませんか!

そのお客様だけでも喜んで下されれば・・・とカジマートさんが声をかけてくださったんです。

一人のお客様のために動かれるスーパーさんって、他にあるでしょうか!!

もう、感動です。


打ち合わせもかねてカジマートさんに伺うと、店頭で店長さんとお話ししてると・・・

なんと、そのお客様がいらっしゃるではありませんか!!

こんな偶然、あるんでしょうか?


少しの時間でしたが、3人でお話しさせていただきました。

アレルギーのこと。今まで諦めていたパンが食べられる喜び。トントンのパンが給食で活躍していること。

話は尽きません。


一人でもお客様が喜んでくださるのであれば、そんなに売れなくてもずっと続けて販売していきたい。

カジマートの常務さんはそうおっしゃってくださいました。


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その後、カジマートさん全6店舗に置いていただけるようになりました。

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