おわりに


パン屋の業界に入ってもうすぐ20年になります。

振り返ってみると、この20年はあっという間でした。

なんだか年を取るのが怖いお年ごろです(笑)

本文にも書きましたが、パン屋になったのは「毎日焼きたてパンが食べたい!」という、妻のきよみさんの何気ない一言がきっかけ。


当時はパンに全く興味がなく、フランスパンといえばスーパーに売っているフニャフニャの「フランスパン」と書いてあるパンのことだと思っていました。

もちろん、アレルギーの知識も皆無。

今、どんなことをやっているか、20年前の自分に教えたら、さぞビックリすることでしょうね。

パンのこともアレルギーのことも、全く知りませんでしたから。


人生って偶然の積み重ね。本当にそう思います。


もし・・・

妻のきよみさんといっしょになっていなかったら…
自分のお店を持たなかったら…
初めからパンが売れまくっていたら…
ちなみちゃんとの出会いがなかったら…


アレルギー対応パンを作っていなかったでしょう。

そして今、アレルギー対応パンを作り続けることができるのも、パンを買ってくださるお客様のお陰です。

ありがとうございます!

会社の経営が行き詰まれば、作りたくても作ることができなくなりますから。


今まで目標にしてきた、姫路市の「アレルギーっ子のパン専門店ジュヴィール」さん、京都市の「卵・乳製品・砂糖ゼロぱんの店1538」さん、豊中市のアレルギー対応ケーキ&洋菓子「手作り焼き菓子の店カドー」さんが軒並み閉店されました。

同じ志のアレルギー対応パンやケーキのお店がなくなるのはとても残念でなりません。

「アレルギー対応」と謳えば謳うほど、アレルギーとは無縁の方たちにとって、「私達には関係のない食べ物」「味のない食べ物」「どうせ美味しくないんでしょ」なんてレッテルを貼られてしまいます。

アレルギーがあってもなくても美味しい!と言っていただくためにはどうしたらいいか?

当店の永遠の課題です。


最近では、アレルギーに対応してくださるカフェやレストラン、アレルギー対応コーナーを設置してくださるスーパーさんも増えてきました。

インターネットで検索すると、昔では考えられないほどお店は出てきますし、学校給食もアレルギー対応に向かって少しずつ改善されています。


妻のきよみさんは幼少時代、果物や一部の野菜を食べると口の中が痒くなって、口の周りにブツブツが出来たそうです。

今にして思えばそれは完全なアレルギーですが、当時は「食物アレルギー」という言葉がなかった時代。

食べるのが嫌だというと、「好き嫌いしちゃダメ!」と怒られて、泣く泣く食べていたそうです。小さく出来るものはなるべく小さくして、口の周りにつかないように一気に飲み込んでいたとのこと。

幸い、重度のアレルギーではなかったので、飲み込んでしまえば大丈夫だったそうです。


そんな食べ方をしてると、当然「食べる」という行為自体が嫌いになりますよね。

「また痒くなるものを食べなきゃいけない…」そう思いながら食べているわけですから。

今でも食べることにはあまり興味がなくて、無理やり食べさせてます(笑)


アレルギーがあることで、自分のように食べることを嫌いにならないで欲しい。

そうきよみさんは言います。


身体は食べ物から出来ています。

食べることが嫌いということは、身体が作られないということ。

成長期ならなおさらです。


みんなと同じものが食べられないなんて、ちょっと悲しいですよね。

アレルギーっ子たちは、いつも「ダメ、ダメ」って言われていると思います。

保育園や小学校に行ってもみんなと同じものじゃない・・・

それがすこしでも、「いいよ、いっしょだよ」に変わればなって、そう思っています。


「食べる」という行為は、本来、楽しいこと、そして幸せなことのはずです。

その一端にトントンがお役に立てることがとても嬉しいんです。


アレルギーっ子は毎年増え続けています。

その子供たちが「食べる」ことを嫌いにならないように、アレルギー対応のお店やメーカーが増えてくれればと心から願っています。




株式会社トントンハウス 代表取締役 井藤修(店チョ)