4 ちなみちゃんの想い

思いもかけない告白

卵と乳製品を一切持ち込まないアレルギー専用のパン工場を作って1年が過ぎた頃。

全国のスーパーさん、薬局さん、カフェさんにお取り扱いいただけるようになりました。


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そのきっかけを作ってくれた、ちなみちゃん。

ちなみちゃんのお母さんから「卵と牛乳抜きのパンを作っていただけませんか?」というご要望がなかったら、今のトントンはありません。


当時、小学校5年生だったちなみちゃんは、もう高校3年生。

友だちを連れて、楽しそうにトントンでパンを買っています。

去年、長年取り組んでいた減感作療法が実って、アレルギーも克服しました。


そんな中、ちなみちゃんのお母さんが神妙な面持ちでトントンに来られました。

「あの、ちょっとお話が…」

どうしたんですか…恐る恐る聞いてみると…


「ちなみがトントンさんに就職したいって言うんです。」


えぇっ!( ゚Д゚)


ちなみちゃんの行っている高校は、地域一番の進学校。

その高校から就職するなんて、聞いたことがありません。

これほど嬉しい話はないんですけど、、、いや、大学に行って見聞を広めて、いろんな経験をして…それからパン屋になるってことも…


「進学校は大学のために行ったんじゃなくって、制服が可愛いからってちなみが選んだんです。毎日息が詰まるほど勉強しなくてはいけないのが嫌でしょうがないみたいなんです。高校3年生になって進路を決めなくてはいけない時期。トントンさんが出たテレビ番組をDVDに録画してあって、『トントンに就職したい…』って泣きながら毎日見てるんです。」


でもね、ウチはまだ小さい会社で、そんなにお給料も出せないし、パン屋の仕事は立ちっぱなしの重労働。のんびりとできない仕事なんです。『パン屋』っていうなんだかホンワカしたイメージで来られて、就職したけどイメージと違うって辞められることも多いんです。だから、ウチではアルバイトで経験を積んだ方でないと、正社員にしない方針なんですが…


「アルバイトでいいです!使えるようになってから正社員にしてください!!」


最近になってようやくアレルギーに対しての理解が深まって、対応されている自治体も増えてきましたが、石川県はまだまだ理解されていない場所。

今でもほとんどの小中学校でアレルギー対応はされていません。

給食が食べられないので、ちなみちゃんのお母さんは毎日欠かさずお弁当を作っていたと聞いています。

外食もほとんど無理。学校で自分だけ違うという疎外感も味わって、友達や先生から心にもない言葉もかけられたと思います。


「ちなみの思う通りの人生を歩んでほしい。」


ちなみちゃんのお母さんの、そんな一言が印象的でした。


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後日、ちなみちゃんと会うことに。

ウチに来たいという理由を直接聞きたかったからです。

パン屋なるには資格もいらないし、大学を卒業してからでも十分間に合うよ。そんなに急がなくても…


「アレルギーの子供たちに『このパンなら大丈夫だよ、美味しいよ』と伝えたいんです。」


・゜・☆・゜:*(感´∀`激)*:゜・☆・゜・

なんとシビれることを言うのでしょう。


ただ、自分が食べられるパンを作りたいわけではない、自分と同じようにアレルギーで大変な思いをしているアレルギーっ子たちに「大丈夫だよ」って伝えたい。

その心意気に惚れてしまいました。


わかった!一緒にやろう!!


「何か今から準備することはありますか?」

特に何もすることはない、しいて言うなら、体を鍛えておいて!


その日から、ちなみちゃんは毎日お家でパン屋ケーキを作って、そして筋トレをしていたそうです。


トントンファミリーの仲間入り

2014年3月。

晴れてちなみちゃんは高校を卒業しました。

この年、高校を卒業した全員が進学の道を進みました。

ちなみちゃんただ一人を除いて。


4月になり、ちなみちゃんは晴れてトントンファミリーの仲間入りです。

無言で黙々と仕事してるんで、楽しいのか楽しくないのか、経営者として不安・・・( ゚Д゚)


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「楽しい?」って聞いてみると・・・

「生地触ったり、自分で作ったパンを見ると、めっちゃ楽しい!」って・・・

楽しすぎて真剣なだけなのね・・・(^_^;)


あっという間に3ヶ月が過ぎ、一通りパンが作れるようになりました。

パン生地を捏ねたり、整形したり、焼いたり。サンドイッチも作れるように。

想いが詰まっているからなのか、あっという間にパン作りを習得しました。


接客をするためには、お客様にパンの説明ができなくてはいけません。

そのために3ヶ月間、アルバイトとして研修してきました。

そして、晴れて正社員になる日です。


トントンの接客といえば、着物。

まずは形からということで、ちなみちゃん用に着物風の作務衣を製作中です。

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きよみさん、真剣です。

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着物の生地で作った作務衣。


これにエプロンを付けると、ぱっと見たとき着物に見えるっていうわけ。

下はスカートになってます。

これを着たちなみちゃん、カワイイだろうなぁ〜(*´∀`*)


いよいよ本格的な接客。

地元のお客様に愛されるように、これから精進です(*´∀`*)


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ちなみちゃんに初めて会ったのは8年前。

お店をオープンしてすぐです。


あの頃は卵も乳製品も全くダメで、パンは憧れの食べ物。

今では、生地を捏ねてパンを焼いてサンドイッチも作れる。


アレルギーに苦しんで、大変な思いをしてきたけれど、今はパン屋で働いている。

アレルギーの子供たちに「このパンなら大丈夫だよ、美味しいよ」と伝えることができる。


あなたはアレルギーっ子の憧れなのですよ!


トントンパン物語

やわらかくてふわふわのパンが得意でハード系はちょっと苦手。夫婦2人から始めた、ごく普通の小さなパン屋でした。それが・・・なぜ・・・卵と乳のアレルギー対応パンを作り始め、卵と乳製品を持ち込まない日本で唯一のアレルギー対応パン工場を作ることになったのか・・・